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2023/05/11 15:50

数年前のある夏の日、嵐から逃れるようにして湯俣に降り立った私は伊藤新道をはじめて目にしました。
北アルプスのどことも似つかないその景観と雰囲気。常に変化するフィールド。
その日から私は湯俣と伊藤新道の魅力にすっかり虜になってしまいました。

伊藤新道ギアをやってよ。

ある日そう相談を受けた私は、今まで長靴やスニーカーでもこなして来たような小屋主が、なぜ今更そのようなことに興味を持ったのかはまったくの謎でありました。
でも実際によく考えてみると、必要以上に沢登りの装備を携えてくる登山客。何を準備していいのかさっぱりわからず相談してくる友人たち。雨や嵐の日に無茶な格好で行動して小屋へ逃げ込んでくる登山客。
…少しやってみる価値はありそうです。

実際にはじめてみると、協力してくれるメーカーの方達と話し、相談し深い交流が生まれました。
何か新しいものを作ろうという流れさえも起こっています。
確かに今まではアウトドアメーカーが山へ赴き、道具を作り提案するというカタチが当たり前のようであったと思いました。
私たちはフィールドにいます。
フィールドから発信するものがあっても面白いんじゃないかと思うのです。

私たちの選んだ商品は、メーカーや作り手との深い絆によってお取り扱いさせていただいています。
彼らが身を削って協力して下さっているドネーション率は伊藤新道を始め北アルプスの登山道の維持管理、環境保全に充てられます。
メーカー、売り手、買い手がひとつとなって、楽しむフィールドの保全に繋がっているというのは、まだまだ微力であるかもしれませんが、新しい理想のカタチのひとつではないでしょうか。

伊藤新道ギアは伊藤新道にもちろん特化してはいますが、伊藤新道だけで使えるものは全く用意していません。それは我々のフィールドである北アルプスを、豊かに遊び尽くす道具なのです。それはきっと皆様の安全にも繋がっていくものと信じています。

まだまだ手探りで準備もゆっくりではありますが、楽しみにしていていただけけると嬉しく思います。

角倉翔一